沈黙博物館。

沈黙博物館 (ちくま文庫)

沈黙博物館 (ちくま文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)妊娠カレンダーに続く小川洋子作品第三弾(私の中で)。
この人の作品に流れる空気は好きだなあ。と思います。
現実にありそうで現実にはない世界。
生と死の間をさまようような世界。
この作品で、主人公の博物館技師*1は亡くなった村人の形見を集めた博物館を作ります。
そういう意味では最初から「死」というものがテーマにあるんだけど、それだけじゃなくてだんだん主人公のいる世界が生者の世界なのか死者の世界なのかわからなくなってくる感じがあり。
まさに堀江敏幸さんの解説にあったような印象を同じく私も受けました。
村上春樹さんの世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドの「世界の終わり」のほうの世界と似た印象。といえばよいのか。
私は小さい頃、もしかしたらもう私は死んでいて、この世界は死んだ人たちの住む世界なのかもしれないと本気で悩んでいました。
そのうち、いくら悩んでみたところでこの世界にいる私たちには正解はわからないわけで、とにかく生きるしかないんだなと思って悩むのをやめましたが。
この作品を読み終えて、そんな想いを思い出したりしました。

*1:学芸員ではないようだけどいわゆる展示業者でもないみたい。調査や収集もするし、展示作業もする。