死者の救済史。

死者の救済史―供養と憑依の宗教学 角川選書 354

死者の救済史―供養と憑依の宗教学 角川選書 354

研究会発表が一週間後に近づいております…。
そんなこんなでやっと読んだ池上先生の著書。
すごくおもしろかった。
日本人の信仰を「シャーマニズム」と「祖先崇拝」で分析しようとする試みが持つ「固有信仰」イデオロギーを明確についている。
柳田國男以来、「仏教以前」「儒教以前」の純粋なる「日本的」なものを追いすぎてきた。
結局のところシャーマニズムや祖先崇拝という概念も外来のものであり、もっと違う言葉で語ることができるのではないか、というのがこの本。
祟りと祀り、供養、といったタームを使って神道的なものと仏教的なものとそれらに解消されない心性をうまくまとめているなという印象でした。
私が研究している葬送関係でも、最近は葬式仏教離れの傾向にあって、仏教や新党といった「宗教」から離れて「本来」の「日本的」なあり方に回帰していこうとする動きが見られるけど、実際日本の思想史を考える上で仏教や儒教の影響ってものすごく大きくて無視できないもので。柳田國男みたいにそれらを排除していったとしてもそこに残るものが「日本的」なのかっていったらそうじゃないよなあともやもや考えていたので、そういったもやもやにひとつの見方を示してくれました。
シンポジウムや学会で先生本人も何回かお見かけしてますが、ジェントルマンな感じですよねー。