魔王。

魔王

魔王

すごかった。重苦しい。そして緊迫感。
なんだかものすごく後味が悪い。
というのは現代日本をあまりにもよく映した合わせ鏡であるゆえ、考えるところが多かったからかと(それが主題じゃないけど)。
「考えろ」という台詞がたくさん出てくる作品なんですが、
さて、「考える」ってなんだろう。と考えてしまいました。
誰かが作って用意した解答に賛同するのは違う気がするし、誰かが用意した情報を土台に思考をめぐらすのも危うい気がする。
「考えろ」というのは「疑え」と同義なのだろうか。
周りのものを疑い始めると最後には自分という個人しか残らない。
結局大衆社会においては政治も経済もムードで動いてしまうのであって、その中で個人がどれだけ自力で立っていられるのか。
などと考えてみたり。
他の伊坂作品のように複線が最後にばーっとつながって…というおもしろさには欠ける感じがあるものの、これはこれで決して悪くない作品だと思います。
先の本屋大賞では本作は候補作中最下位になってしまったようで。
伊坂作品のもうひとつのノミネート作死神の精度もそのうちに手を出しますか。


あと、私も「ごきげんようおひさしぶり」とか「せせらぎ」とか言ってみようと思いました。
だからといって嫌悪感が拭えるわけはないけれど。